「編集」は、それまでカットごとバラバラに仕事していたものが集まって、ドラマとしての流れが確認ができるポジションだと思います。(小島さん)
小島:アニメーション制作の順番でいうと「編集」は、撮影が終わってからの作業となり、編集が終わったら一度音響スタジオに渡します。ここで声優さんたちのセリフが入るアフレコやダビング作業が行われ、そのあとにまた僕らのところに戻ってきて、最終的な編集作業を行います。
(詳細はアニメーションができるまでを参照)
「あたしンち」は通常ひとつの話で100カット弱くらいあるのですが、それらを最初に台本を見ながら順番に並べていきます。そこではじめてドラマの全体像が見えてきます。そして編集作業に取りかかるのですが、情感がとても欲しいシーンでは、その絵のコマ数を伸ばしたり、あるいはテンポアップしなきゃいけないところでは切ったりして、全体の流れを作っていきます。例えば、恋愛話の様な男女が見つめあうシーンで、みかんと岩木くんの場合、みかんの方が想いが強いから、みかんが見つめる秒数の方が長かったりするわけですよね。
「あたしンち」ならではの間(ま)のひとつに、おばさんの動きの間(ま)がありますね(笑)。演出の方も、主婦の気持ちをよくわかっていらっしゃるなーと思います。(中葉さん)
中葉:でも、その間(ま)をつかむのにも最初は苦労しましたね。アニメ「あたしンち」に関わることが決まり、まずは原作を読みました。そこで、話の広がり方や人間関係についての自分なりのイメージを描くのですが、声優さんたちの声が入って、お話がどういうテンポで進んでいくのか、をつかむまでは、間(ま)の取り方に苦労しました。というのも、私はキャラクターになったつもりでセリフを言いながら編集するんです。最近では、このセリフはお母さんは大体こういう風にしゃべるだろうな、とか、演技の仕方も想像できるので、編集もやりやすくなってきましたね。お父さんだったら、ちょっとズレてる感じ。「わっ!」と他のキャラクターが言ったら、ワンテンポおいて「おっ」と言わせるとか。みかんは早口なので、テンポいい感じの間(ま)を取っています。
「あたしンち」の魅力は、誰もが自分の生活の中でも感じる「あるある」感だと思うのですが、私も、ときどき自分におきかえ「わかるわかる」と、うなずきながら編集作業していることありますよ(笑)。
たとえば、お母さんが出かけようとしたとき、トイレに行きたくなってしまった!だけど、玄関で靴がなかなか脱げなくて、思いっきり足をふってしまうところとか(笑)。他のアニメなら、もっと単純にバタバタさせてトイレに行かせるところを、「あたしンち」では、あえてもどかしくさせ、笑いを誘っているのです。
シーンやコマ数の確定では、キャラクターの気持ちや立場になり、またシチュエーションにも気をつけながら作業を行っています。(小島さん)
小島:僕が最近の編集作業で印象に残っているのは、川島とユズヒコのシーン。川島がユズヒコのことを想い、うるうるするシーンは思いっきり秒数を伸ばしました。これで、僕の大好きなユズヒコが、とてもいい男に見えたりして(笑)。
(仕事の流れの話に戻ります)最初の編集作業が終わったあと、音響スタジオでセリフと効果音と音楽が入り、それがまた全部最終的に編集に戻ってきます。何度かリテークの絵を入れ替えて、そして、絵もOK、音もOKとなったら、もう一度ドラマの流れを確認して、ビデオ編集と言われている、放送フォーマットに整える会社に渡して、僕らの仕事は終わります。
編集の仕事は、細かい作業に思われがちなのですが、まぁ実際に細かい作業ですが(笑)、自分たちのところにすべてが集まってきて、自分の感性によって、いかようにでも料理できると思っていますので、実にドラマティックな仕事をしているという自負もありますね。
編集 小島俊彦
岡安プロモーション所属。アニメーション編集の仕事歴30年。アニメ以外にも映画やドキュメント番組など様々なジャンルの編集に携わる。
編集 中葉由美子
岡安プロモーション所属。編集歴23年。アニメ「あたしンち」の編集には、小島さんと共にスタート当初から関わる。
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